今回の記事では、ダウ理論の「トレンドには3種類ある」について解説していこうと思います。
以前の記事では、「ダウ理論」には6つの基本原則があること、そして「トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する」という基本原則を確認しました。
「トレンドには3種類ある」というダウ理論の基本原則は、個人的には、FXにおいて2番目に大切な基本原則だと考えています。
そして、必ずマスターしてほしいテクニカル分析の1つです。
最新のテクニカル分析の多くは、実はダウ理論の発展形に過ぎないという話は以前にもしました。
今回は、 ダウ理論の基本原則、「トレンドには3種類ある」の内容を簡単に確認し、FXにどうやって応用していくのかを解説していきます。
まずは、「ダウ理論」の基本原則(6つ原則)を簡単に確認し、利用目的と内容、FXでの利用方法をそれぞれ見てみましょう。
ダウ理論の基本原則(6つの原則)の確認
ダウ理論には、基本原則が6つありました。
まずは、ダウ理論の6つの基本原則がどういった内容なのか以下に列挙しています。
- トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
- トレンドには3種類ある ←(ココ)
- トレンドは出来高でも確認されなければならない
- 平均は相互に確認されなければならない
- 主要トレンドは3段階からなる
- 平均はすべての事象を織り込む
(注)基本原則の順番は特に重要ではないと思いますので、私が重要だと思う順番に並べてあります。
テクニカル分析を行ううえで、これら6つの原則から「外れる」・「漏れがある」ということは、「優位性を1つ失う」ことになります。
また、6つの基本原則をマスターすれば、FXで勝つための「基礎」はほとんど出来上がると言ってもいいくらいです。
ですので、1つずつマスターしていく必要があります。
読み飛ばしたり、流し読みせず、腑に落ちるまでしっかりと理解しながら進めていっていただきたいです。
※ダウ理論「トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する」がわからない方はこちら
それでは、まず、「トレンドには3種類ある」とは何なのかを確認していきましょう!
「トレンドには3種類ある」を使う目的は?
まず、「トレンドには3種類ある」の基本原則を「何のために使うのか」を明確にしないといけません。
「トレンドには3種類ある」をFXのテクニカル分析に取り入れる目的は、
売買目線(売買の方向)を決めるためです。
目線とは、
・「買い目線(買い方向にエントリするのか):Buy、Bullとも」
・「売り目線(売り方向にエントリするのか):Sell、Bearとも」
・「レンジ目線(買いも売りも拮抗している状態で通常はポジションを持たない)」
です。
この売買目線、方向性を決めるためのツールが、「トレンドには3種類ある」です。
この基本原則をもとに、FXの相場環境認識をしていくことになります。
ダウ理論「トレンドには3種類ある」とは?
ダウ理論における3種類のトレンドとは、
主要トレンド (=長期トレンド)
2次的トレンド(=中期トレンド)
2次的トレンド(=中期トレンド)
の3つに分類されています。
本家のダウ理論は、主要トレンド(長期トレンド)を1年超と、かなり長いスパンでトレンドを考えています。
2次トレンドは数ヵ月超の調整局面、小トレンドは数週間超とそれぞれ長いスパンでとらえています。
本家のダウ理論がトレンドを長いスパンでとらえる理由は、
・ 本来のダウ理論が「株式市場」を対象としていたこと
・ 当時はデイトレやスキャルピングができなかったこと
などが挙げられます。
一方、
FXでは、もっと短いスパンでトレンドをとらえます。
その理由は、
・ FX(為替相場)は、平日24時間世界中で取引されていること
・ 個人が簡単にトレードできるようになったこと
・ 情報技術の発展にともないデイトレやスキャルピングが発達したこと
などが挙げられます。
いずれにしても、本家のダウ理論をFXにそのまま活用する必要はありません。
(注)「ダウ理論」本来のスパンでも、為替市場で機能しています。ただ、FXは差金決済により短期の利幅を狙うのが目的であり、スワップ目的でない限り、年・月単位での保有はFXのメリットを失ってしまいます。
この理論で重要なのは、
トレンドには特定の周期があり、主要トレンドに対して、調整局面とトレンド局面を繰り返していく
という相場の性質です。
以下では、ダウ理論基本原則の核となる考え方(ロジック)を抽出し、FXに応用していくというアプローチで説明していきます。
そのために、まず、FXにおいての「トレンドには3種類ある」は、FXにおいてどのように解釈されているかを確認していきます。
長期トレンド・中期トレンド・短期トレンドとは?
3種類のトレンド
FXでは、先に述べたとおり、3種類のトレンドを、以下のように区別します。
長期トレンド
中期トレンド
短期トレンド
まずは図をみてみましょう。
【3種類のトレンド】

【長期トレンド】
長期トレンドは方向を示しています。
安値を切上げながら、高値を更新し続けているため、長期の目線は、上目線(買い目線)ということになります。
【中期トレンド】
中期トレンドは、上昇期と下降期(調整期)を繰り返しています。
上昇からの半値戻しや3分の2戻しを繰り返しながらも、長期トレンドに沿って動きます。
【短期トレンド】
短期トレンドは、多くの波を作りながら上昇と下落を繰り返しています。
中期トレンドの上昇期・下降期それぞれで、短期トレンドを形成しているのがわかります。
これが、「トレンドには3種類ある」の考え方です。上の図は、必ず頭の中でイメージができるようになってください。
トレードスタイルごとのトレンド
そして、
FXの相場では、「トレードスタイルごと」に、これら3つのトレンドが形成されていきます。
つまり、
「スイングトレードをするトレーダーにとっての短期トレンドが、スキャルピングをするトレーダーにとっては、長期トレンド」
という場合があるからです。
これは、各トレーダーのトレードスタイル(監視足)によって、「長期足・中期足・短期足」の分類が異なるために生じることになります。
代表的なものでは、
【スイングトレード】
「長期足=日足」 ⇒ 「中期足=4時間足」 ⇒ 「短期足=1時間足」
【デイトレード】
「長期足=4時間足」 ⇒ 「中期足=1時間足」 ⇒ 「短期足=15分足」
「長期足=1時間足」 ⇒ 「中期足=15分足」 ⇒ 「短期足=5分足」
【スキャルピング】
「長期足=1時間足」 ⇒ 「中期足=15分足」 ⇒ 「短期足=5分足」
「長期足=30分足」 ⇒ 「中期足=5分足」 ⇒ 「短期足=1分足」
などです。
私はデイトレとスキャルピグがメインでたまにスイングもするため、月足から1分足まですべて確認しますが、トレードスタイルによって相性のよいタイムフレームがあるので、まずは上記を参考に、自分のトレードスタイルに合った監視足を見つける必要があります。
FXへの応用(実践)
それでは、実際のチャートを例にFXでどのように取り入れていけばよいのかを説明していきます。
以下の図は、長期トレンドを「日足」、中期トレンドを「4時間足」、短期トレンドを「1時間足」としてみた例です。(スイングトレードの例)
もちろん、デイトレに置き換えて長期トレンドを1時間足、中期トレンドを15分足、短期トレンドを5分足と置き換えても可能です。 ただし、一般的にスパンが長いトレンドの方が強いと考えて下さい。
【長期トレンド:日足】

緑の□の中は45日分(2ヵ月超)の長期トレンドです。
ダウ転換(ブルーの水平線)を果たしてからは、押し目を作りながらもトレンド方向にしっかりと上昇しています。これを長期トレンド(主要トレンド)とします。
【中期トレンド:4時間足】

日足で確認した「緑の□の部分」を4時間足に落としてみたのが上の図です。
ほぼ同じ長さの波を上下に描きながら、中期トレンドを形成しているのがわかるかと思います。
長期のトレンドが上目線ですが、4時間足レベルでトレードすると、安値は切り上げ、高値は更新しているものの、何度も戻されています(これを中期トレンドの調整と言います)。
エントリタイミングによってはかなり耐えなければならない場面や、最悪損切もあり得るでしょう。
長期トレンド(主要トレンド)が上昇中であっても、中期トレンドでは、上昇局面と、調整(下落)局面が交互にやってきます。
さらに、4時間足の「ピンクの□」で囲ってある部分について、1時間足で見てみましょう。
【短期トレンド:1時間足】

先ほどの4時間足の「ピンクの□部分」を1時間足で見た図です。
水色のジグザク線が短期トレンドを示しています。
中期トレンドの上昇と下降において、それぞれ波を作りながら上昇し、今度はトレンド転換し、下落しています。
中期トレンドの頂点付近で、ダブルトップを形成し、そのネックラインで下降しています。(下図参照)
【ダブルトップ+ネックライン:1時間足】

しかし、その後長期トレンドの「トレンドライン」付近で反転し、再度、長期トレンドの方向へと上昇しています。
スイングトレードをする上での戦略は、長期トレンドの方向へ、中期トレンドの波の大きさを目安に、短期トレンドでエントリ・決済(今回の場合転換シグナルで決済)をしていくことになります。
【スイングトレードの戦略:1時間足】

上図の通りトレードした場合、82時間保有+92PIPSとなります。
そして、中期トレンドの調整が終わり、長期トレンドの方向へ再度進んだらさらにエントリします。
このように、「長期トレンドの中に中期トレンドが存在し、中期トレンドの中さらにまた短期トレンドが存在する」というようにして、為替相場は動いていきます。
これをフラクタル構造や、相場のフラクタルな性質と言います。
正直言って、この分析をマスターできれば、安定して勝つことができます。
それほど重要なテクニカル分析です。
もちろん、この分析単独で利用するのではなく、様々なテクニカル分析を組み合わせ優位を高めていく作業は必要になります。
ただ、この相場の性質を理解できているかどうかで、勝率はかなり変わってくると思います。
特に、「短期足の値動きだけを追いかけて、いつも損切になる」という方は、この理論が理解できていない可能性が高いです。
ちなみに、上の例はスイングトレードの例でしたが、この3種類のトレンドをさらに細かく見ることで、デイトレやスキャルピングができるようになります。(下図参照)
【デイトレ・スキャルピングへの応用】

今回の例では、
4時間足の中期トレンドの調整局面で、1時間足の短期トレンドが反転シグナルを示した
(ダブルトップ+ネックライン割れ)
⇒ 短期トレンドでは「売り」が可能(中期トレンドの調整局面だから)、ただし、長期トレンドはまだ上昇トレンドのため、大きな値幅は狙うべきではない
⇒ 15分や5分足まで時間を落とし、売りエントリする(損切をネックライン・利確をダブルトップの起点となる安値まで等)
という戦略もとることができます。
マルチタイムフレーム分析との関係
これまでの説明は、「ダウ理論」を主軸に「トレンドには3種類ある」を考えてきました。
しかし、現在は「マルチタイムフレーム分析」という名前の方が有名かもしれません。
根幹の部分では同じものなので、マルチタイムフレーム分析は、「ダウ理論」(トレンドには3種類ある)の応用方法の1つと考えてよいかと思います。
以下の記事では、マルチタイムフレーム分析について解説しています。
解説の切り口は違いますが、「結局は同じことだな」と気が付くことができれば、深く理解できているのではないかと思います。
テクニカル分析は、何度も「覚える」→「実践する」→「覚えなおす」→「実践する」…を繰り返して、初めて身に付くものです。
知識を定着させるためにも、ぜひ以下の記事も読んでいただきたいです。
まとめ
以上、「ダウ理論」の基本原則の1つ、「トレンドには3種類ある」
を確認していきました。
個人的にはダウ理論のなかで2番目に重要で、かつ、優位性の高い分析方法だと思います。
絶対にマスターしておくべきです。
ダウ理論を分析するツールとしてMT4というオススメツールがあります。まだインストールしていない方は、以下の記事を参考に、ぜひインストールしてみてください。
また、ダウ理論は、他の5つの基本原則も非常に重要で、マスターすべきものです。
他の基本原則も、別の記事で紹介する予定ですので、参考にしていただけたらと思います。
ダウ理論「 トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する」をマスターしていない方は以下の記事へ↓
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